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「漢方医学が支える健康~治療と研究」
富山大学 医学部 渡り英俊 助教

2019年2月16日(土) 14:00~15:40ごろに放映予定です。

配信は終了しました。沢山のご視聴ありがとうございます。


講義中にいただいた、皆様からのご質問にお答えします。

町にある漢方薬局と、大学病院の漢方医は何が違うのでしょうか?
診察の有無が大きな違いになります。漢方薬局では薬剤師が漢方を処方することになりますので、漢方薬の種類を決める際に診察は行わず、問診により処方を決定します。大学病院に限らず、病院で漢方医が処方を決める際には脈診、腹診などの漢方的な診察を行って処方を決めます。
東洋医学は経験ベースだと感じました。人によって意見が変わるということはないのでしょうか?
会場での質問でも回答をいたしましたが、診断をする医師によって意見が変わることはよくあることです。患者さんの症状を緩和するという目標は同じでありますが、それぞれの医師によってアプローチの方法が異なることがあります。その違いは医師のそれまでの経験や好みなどによって左右されますが、治療が上手くいけば患者さんの症状が緩和することには変わりはありません。登山の際に目指す頂上は一緒ですが、いくつも登山口やルートがあるのと同じようなイメージで考えていただくと良いかと思います。
東洋医学は自由診療ですか?
自由診療、保険診療どちらも可能です。多くの病院では保険診療により漢方治療が行われています。
古典を参考にしているということは、東洋医学は一度衰退したということでしょうか?
東洋医学、漢方が衰退したということではありません。東洋医学はもっとも古い傷寒論、金匱要略といった漢方医学書が誕生してから時代ごとに受け継がれながら、多くの修正や改良がくわえられて現代にまで受け継がれてきています。しかしながら時代ごとに変化が加えられるにつれて、その変化の中には多くの雑多なものが混在するようになり漢方理論もより複雑になる傾向があります。現代で漢方を実践しようとするときには原点に立ち返り、より古い古典からよりシンプルな漢方処方、漢方治療理論を学び、使用した方が良いと我々は考えています。そのために古典の中でも最古の傷寒論、金匱要略が漢方におけるバイブルとして重要視されているのです。
実際の医療現場では、東洋医学はどれくらい使われているのでしょうか? 東洋医学について知識のある医者は何割くらいでしょうか?
現在、東洋医学会の漢方専門医は約2000人です。日本全体の医師数が30万人ほどですから単純に考えると、東洋医学の知識のある医師は全体の医師の中で1%に満たない程度ではないでしょうか。しかしながら漢方を処方し東洋医学を日常診療に取り入れている医師は多くいますので、広い意味での東洋医学を使う医師と考えると多くの医師が使用していると考えることもできます。
西洋医学を極めると、東洋医学は不要になるのでしょうか?または、どのように使い分けるのでしょうか?
西洋医学が発展すればするほど、東洋医学の必要性も増してくるのではないかと考えます。科学的な検査や診断が進歩すればするほど、検査では検出されない症状や病気は西洋医学的には異常なしと扱われて患者さんは行き場がなくなる傾向が強くなってきます。科学的にはまだすべてを説明できるわけではないけれど、東洋医学的な診断に基づいて治療はできますというのが東洋医学の強みでありますので、西洋医学が発展、進歩していっても東洋医学が不要になることはないと考えます。西洋医学的に診断、治療法とも確立しているような領域では西洋医学を中心に、東洋医学は補助的に使用していく。逆に西洋医学的には診断も治療もできないような病態には東洋医学を中心に使用することで使い分けができるといいと考えます。
東洋医学はとても面白いなと感じました。しかし、現在世界では、西洋医学が基準となっています。東洋医学が西洋医学に比べて、あまり使われていないのはなぜでしょうか?
西洋医学の進歩はすさまじく、これまでもこれからも多くの病気に有効な薬剤や治療法が開発されていくと思われますので、単純に多くの病気に有効であるから西洋医学が基準となっているのだと思います。しかし発展した西洋医学の診断、治療の網からも漏れ出てしまうような病態の患者さんは少なからず存在します。全体の数としては西洋医学が有効な病気、病態が圧倒的に多く、そうではない患者さんの数は少ないために、その患者さんの数を反映して東洋医学は西洋医学に比べてあまり使われていないのだと思います。
近年では医療に様々なAI技術が取り入れられていると聞いています。東洋医学の診断は、経験知ベースとなっているところが多く、AI技術を取り入れにくいと思うのですが、AI等の導入は将来的に可能なのでしょうか?
AIを用いることによって東洋医学的な診断をすることは今後可能になってくると思われます。しかし、AIを用いた診断、治療ではどうしても確率を重要視することになると思われますので、目の前にいるその患者さんに薬が効くかどうかを判断するのではなく、あくまで全体の中で有効性が高い診断、治療を選択することになるでしょう。しかしながら、漢方治療を行っていると、一見普段は使わないような薬が非常に高い効果を示したり、典型例とは真逆の治療を行うと効果を示したりすることがあります。そのような大枠から外れるような診断、治療を選択することはAIでは難しい部分ではないかと思いますので、AI技術が発展していったとしても、漢方医の経験が重要であることには変わりはないと思います。